Hさんは四十二歳の総務管理職、勤めていたアパレル会社の合併により、転職を余儀なくされた。出来れば近い業界での転職を望んだHさんは、結局、技術ソフトのマニュアル作成会社A社へ入社することとなった。A社の総務部長という待遇には喜んでいたものの、Hさんは内心、失意を抱えてA社への入社を決めていた。というのはHさんが第一希望に考えていた服飾雑貨の企業や、大手系列の輸入家具販売の企業などの採用が、最終面接ま
転職前の印象... の続きを読む
「日本型」システムがそうであるように、「システム」は相互に関連しあった諸制度から構成されている。後に詳しく見るように、制度化されない市場も存在する。いや、それが通常想定される「市場」だといってよい。それは確かに「自由」な市場である。つまり、転職や移動を促進する要因も、制約する要因もない。仕事が見つかる限りに応じて「事実」として転職がなされるということであり、いい換えるなら、「事実」として雇用が成立
制度化の違いに応じて、それぞれに異なる「市場」が成... の続きを読む
労働需要側の変化に対して、新規労働者を送り出す供給側の対応はどうなっているのであろうか。残念ながら、企業側の迅速な変化に対応しきれていないのがその実態である。たとえば、毎年、新規学卒者を送り出している大学について見てみよう。他の先進諸国と同じように日本でも大学への進学率の上昇が続いている。とくに、九〇年代に入ってからは高校卒業の就職者数が減少している。文科省の「学校基本調査」によると、九二年の高校
九七年以降、大卒が新卒市場の多数に... の続きを読む
いまひとつの労働力過剰現象は、新規学卒者である。これはほんの数年前の新規学卒者の奪い合いを思い出すとまるで嘘のような様変りだが、目本の雇用制度を前提にすると、このような極端な変動が新規採用者の市場で生じやすい。中高年層を合理化の対象にしたいと言っても、実際にこの階層の雇用を削減するのは容易でない。何よりも彼等には人的資本として莫大な投資が具体化されており、これを削減することはそれまでの人的投資を回
不況の最大のシワ寄せ... の続きを読む
ドイツ型の職業別労働市場について述べよう。すでに指摘したように、それは日本型の内部労働市場と最も隔たったシステムだ。それは技能形成の方式だけでなく、教育制度から職業階層の制度に至るまで、まったく異なる原理に基づいている。それはまた、「制度化」された流動性の利点とともに、さまざまな難点を抱えるシステムでもある。しかし、エリート的な専門職ではなく、一般の職業における技能形成を追求するという点で、日本型
「職能資格」「技能資格」の高コスト... の続きを読む